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猪瀬直樹:東電値上げの「標準モデル」は一種の情報操作

猪瀬直樹:東電値上げの「標準モデル」は一種の情報操作
復興ニッポン 5月16日(水)13時2分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120516-00000000-fukkou-bus_all
 東京電力が5月14日月曜日、新しい役員人事を発表した。東京都が4月27日に発表した株主提案を、株主総会を待たずに受け入れ、樫谷隆夫公認会計士の社外取締役就任を決めた。現在16人の取締役を11人に減らしたうえで、7人を社外から招き、新体制とした。

 樫谷公認会計士は小泉内閣で道路公団民営化プランを一緒につくった同志で、特殊法人などの会計の専門家だ。総括原価方式という特殊な会計の法人を構造改革するために、これだけ適切な人材はいない。東電の経営体質を透明化するための第一歩である。

■東電の合理化、透明性を確保するために

 4月27日、東京都は筆頭株主として東京電力に5項目の株主提案を発表した。樫谷公認会計士の社外取締役への選任は、その第一の議案とした。

 「企業再生やコンサルティングに豊富な経験を有する専門家を社外取締役に選任する」

 5月14日、午後2時の決算発表につづき、東電は新役員を発表。これを受けて5時45分から、東京都庁6階の記者会見室で、樫谷公認会計士と僕で記者会 見した。小泉政権で行革断行評議会ができたとき、道路公団の民営化プランや特殊法人の改革案を一緒に策定し、最近では地下鉄一元化を考える「東京の地下鉄 を考える懇談会」のメンバーとしても、改革案づくりを手伝ってもらった。

 「道路公団でもそうだったが、東京電力はゼロ連結会社がたくさんあり、不透明といえば不透明。東京電力の計画の中身に限定することなく、削減策が早期かつ確実に実行されるよう、会計の専門家、理論家ではなく実務家として取り組んでいきたい」

■説明に一種の情報操作がある

 東電の取締役は11人で、6月27日の株主総会後に「委員会設置会社」に移行する。委員会設置会社では、取締役が業務の監督を担い、執行役が実際の経営 にあたる。取締役11人のうち7人は樫谷氏ら社外から招き、社内のプロパーは4人。執行役は15人のうち13人が社内プロパーである。東電の新体制にとっ て、圧倒的多数のプロパーの執行役陣を、社外が多数を占める取締役が制していくと理解すればよい。

 しかし、東京電力の改革は緒についたばかり、東電は顧客サービス第一という意識に乏しい体質の変革を加速する必要がある。

 5月9日、東電と原子力損害賠償支援機構がまとめた「総合特別事業計画」を政府が認定した。1兆円の公的資金を投入するほか、家庭向けなどの電気料金値上げも含まれている。

 これまで東電は、2兆6500億円のコスト削減をするとしていた。今回の計画には、「追加的に6565億円のコスト削減を盛り込み、10年間で3兆 3650億円を超えるコスト削減」と明記された。当コラムでも東電の子会社・関連会社の無駄を指摘してきた結果、コスト追加削減に反映されたと言える。

 しかし、まだまだ東電の合理化、透明性確保は足りない。とくに、今回明らかになった家庭向けなどの電気料金の値上げについては、説明に一種の情報操作がある。

■30Aの契約電流が標準家庭のモデルか?

 東電の電気契約には、大きく分けて自由化部門(大企業など大口契約)と規制部門(中小零細企業、一般家庭など小口契約)がある。東電が1月に発表した値 上げは、自由化された大口契約についてのものだった。今回、“家庭向け”と報じられている値上げは、規制部門の小口契約が対象となっている。規制部門に は、一般家庭だけでなく、多くの中小零細企業が含まれていることに留意してもらいたい。

 規制部門は現在、3段階料金制度になっている。使用電力量1kWhあたりの料金単価は第1段階(~120kWh)が18.42円、第2段階(120~300kWh)が23.41円、第3段階(300kWh~)が24.68円で、使用量が多いほど単価が高い。

 今回の値上げでは、使用量が多いほどさらに値上げ率を高くしている。値上げ後の料金は、第1段階が19.16円(+0.74円、4%増)、第2段階が25.71円(+2.30円、10%増)、第3段階が29.57円(+4.89円、20%増)となる。

 東電の示す標準家庭モデル(契約電流が30A、使用電力量は290kWh)では月平均6.9%の値上げにとどまるとしている。東電は、契約電流を30Aとした根拠について、契約者の42%が30Aで、もっとも割合が高いからとしている。

 ところが、他の契約者を見ていくと、標準家庭モデルの根拠は疑わしくなってくる。40~60Aの契約者数を足すと、その割合は42%となり、30Aと同 等になるのだ。東電が30Aを標準としたのは、契約電流、使用電力量を低めに見積もって、値上げ率を低く見せようとしているからだ。

■値上げが20%近くになる中小企業もある

 今回の値上げでも中小企業への配慮が足りない。都内の中小企業事業所は約70万軒あるが、そのうち、自由化部門の大口契約に入っているのは約7万軒。わ ずか1割でしかない。残る9割の中小零細企業は、50kW以下の規制部門の小口である。つまり家庭向け電気料金とは、中小企業も含めて、ということなの だ。

 大口については一律値上げが東電から発表されたが、大企業も中小企業も一律値上げでは、体力のない企業は耐えられない。東京都が「中小企業に愛がない」と改善を求めたから、割引プランが導入され、一定の配慮がなされることになった。

 ところが、中小企業の9割が存在する小口契約については、割引プランもなく、経営への配慮がまったくなされていない。たとえば町工場やコンビニは一般家 庭よりも使用電力量が多く、どうしても使用電力量に占める第3段階の割合が多くなる。自由化部門の値上げ平均約17%よりも値上げ幅が増えて、20%近く になるケースも考えられる。

 10日、東電の高津浩明常務を都庁に呼び、料金値上げの説明を求めた。標準家庭モデルの根拠や中小零細企業への影響などについて、正直に説明責任を果たすように注文をつけた。

 顧客をないがしろにする東電の体質は変わっていない。東電を再建するためには、徹底した構造改革を行い、本当の意味で体質を改善していなかければならないのである。

■「経営理念の確立」を盛り込んだ株主提案を行う

 前述の通り4月27日、東電の筆頭株主として、東京都は株主提案を公表した。社外取締役の選任につづいて、以下の4つの内容を盛り込んだ。いずれも東電の構造改革に不可欠のものだ。

・経営理念の確立・経営の透明性の確保
・設備投資の競争原理導入
・民間事業者を活用した火力発電設備のリプレース推進

 東電の定款には、経営理念がない。「第1章 総則」には会社の目的として本来の電気事業以外に「不動産の売買、賃貸借」「宿泊施設およびスポーツ施設の 経営」など本業と関係のない事業が並んでいるだけ。東京電力が電力市場において9電力会社や「新電力」との競争が可能な、効率的かつ顧客サービスを使命と した健全な会社に生まれ変わらなければいけない。そこで、以下の条文を追加することを提案した。

 「本会社は、社内における競争原理の導入等により、低廉かつ安定的な電力を供給し、顧客サービス第一を使命とする」

 顧客サービス第一だから、情報公開は当然だ。小売料金については算出プロセスを開示することを盛り込んだ。現状では、小売料金にどのような経費がどれだけ含まれているか公表されておらず、第三者による検証ができない。

 東電は一方的な値上げを繰り返しているが、算定根拠が開示されないままでは、顧客の理解を得ることはできない。

■顧客サービス第一主義を実現せよ

 総合特別事業計画には、「意識改革」という項目が盛り込まれている。「過度なマニュアル主義、前例主義、設備に係る自前主義、縦割り、部門主義等の問 題」「外部から見た事業運営に係る透明性の不充分さ」「コスト意識や競争意識の希薄性といった問題点」などだが、普通の企業ならあたりまえの話だ。

 東電は顧客に値上げを強いながら、夏のボーナスを支給するつもりでいた。10日になって、ようやく労組と妥結し、夏のボーナス見送りを決定したが、普通の人の感覚からすれば「遅すぎる決定」としか映らないだろう。

 意識改革を進め、顧客サービス第一主義を実現するためのスタート地点に、東電はまだ立ったばかりなのである。


猪瀬直樹(いのせ・なおき)
作家、東京都副知事。1946年、長野県生まれ。1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年 度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。東京工業大学特任 教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。著作に『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(小学館)、『東京の副知事になってみたら』 (小学館101新書)、『言葉の力』(中公新書ラクレ)、『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀(上・下)』(中公文庫)、『東條英機 処刑の日』(文春文庫)。最新刊に『決断する力』(PHPビジネス新書)がある。オフィシャルホームページ:http://inose.gr.jp/
猪瀬直樹Blog:http://www.inosenaoki.com/
Twitterのアカウント:@inosenaoki
書籍の直販を始めました!:http://www.inose.gr.jp/shop/


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