増税したいなら「借金返済」にまわせ

増税したいなら「借金返済」にまわせ
WEDGE 6月28日(木)19時0分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120628-00000301-wedge-pol
 消費税増税に関する社会保障・税一体改革関連法案は、民主党内から57人の造反議員が出たものの衆議院を通過した。仮に民主党が分裂したとしても、小沢派の50人前後が党を割るだけであるから、増税合意の3党の多数は揺るがない。

 したがって、消費税増税は可決されることになるだろう。しかし、社会保障・税一体改革関連法案がどうなるのかは、良く分からない。もちろん、民主党が少数与党になるとどうなるのかという大問題はあるのだが、それは今回の話題とはしない。

 すなわち、少数野党になれば、いつ総理不信任案が通るか分からない。不信任案が通れば解散するしかない。そうなれば、自民党は、消費税に賛成して解散を勝ち得たことになる。解散になれば、自民党も大躍進しないとは思うが、民主党は壊滅的打撃を受けるだろう。

 民主党は、党が壊滅的打撃を受けても消費税を引き上げたかったのだろうか。それでも、小沢一郎元代表にひっかきまわれるよりましだと考えたのだろうか。私は、ここまで仲間に嫌われる人物は大人物かもしれないとも思う。さて、話を元に戻そう。

■増税で何をするのか決まらない

 消費税増税ではなく、消費税増税と社会保障改革とを一体として考えようというのが、社会保障・税一体改革ということだった。

 税・社会保障ではなく社会保障・税一体改革というのがミソである。言葉の順番から、まず、社会保障を議論して、税を議論するということになる。少子・高 齢化に向かう日本において、少子化対策にも高齢化に備えた社会保障の充実のためにも、増税が必要で、社会保障のために増税するというイメージが生まれた。

 また、消費税が逆進的であるとして、そのための対策も必要ということが強調された。どうしても消費税を増税したい財務省が、消費税を増税すればお金をばら撒けると政治家に囁いたのであろう。

 3党とも、消費税を引き上げて、それぞれが重要と考えている少子化対策、高齢者のための社会保障の充実、逆進性対策、その他、税収が増えるなら分け前をよこせということまでは一致しているが、具体的にどこにどれだけ使うのかは決まらないようだ。

 それでも、民主党のマニフェストに書かれた原案を潰すということには合意が得られたようで、低所得者対策では民主党の唱えていた給付付き税額控除措置 が、消費税8%では現金給付、10%では生活必需物資についての軽減税率に、基礎年金一律加算は保険料納付実績に応じた加算に、高所得者の基礎年金の減額 案は削除され、総合こども園の創設が現行の認定こども園の拡充などに決まりそうである(いずれも変わる前が民主党案)。

■増税した分は全額過去の債務償還だけに

 しかし、そもそも消費税を引き上げれば、それを新たな財源として使うことができると考えること自体が誤りである。本欄にも書いたように、高齢者一人当た りの社会保障給付費を現行のままにしておけば、社会保障給付費の対名目GDP比率は、2010年の24.6%から2055年には54.0%まで29.4% ポイント上昇する(「無責任な増税議論 社会保障は削るしかない」2011年12月06日、参照)。

 消費税1%でGDPの0.5%の税収であるので29.4%ポイントを0.5%で割って58.8%の消費税増税が必要になる。もちろん、こんな大幅な増税 が可能なはずはないから、その前に社会保障制度は破綻し、破綻する前の人はもらい得、破綻後の人は大損ということになる。

 私は、かなり前から、将来の社会保障給付の予測について、少しずつ前提を変えた同様の試算を発表してきた(どれも同じような値になる)。誰も間違いだとは指摘してくれないので、この数字は概略、正しいに違いないと思っている。

 将来、58.8%の消費税増税が必要になることを避けるための唯一の方法は、一刻も早く高齢者一人当たりの社会保障支出を削減することである。どうしても消費税を増税したいのなら、消費税を増税して、それを一切使わず、過去の債務の償還だけに使うことである。

 消費税を増税して、それを現在の高齢者のための社会保障の充実のために使ったのでは、将来の社会保障の破綻を早めることになる。高齢者一人当たりの支出が増えれば、高齢者の増加とあいまって、社会保障支出全体がなおさら増大するからだ。

著者:原田泰(早稲田大学教授・東京財団上席研究員)
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