靖国参拝で暗闘、集団的自衛権は越年 安倍政権に何が起こっているのか


文藝春秋

靖国参拝で暗闘、集団的自衛権は越年
安倍政権に何が起こっているのか

安倍首相をめぐる側近たちの綱引き。本当のキーマンは誰か。書かれざる政権の内幕
文三波 一輝 (ジャーナリスト)
2013.09.11 07:00
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/862

「政権発足直後に一度、靖国神社に参拝しておくべきだ。いったん、ずらせば参拝できなくなる」
「参拝すれば日中、日韓関係はさらに悪化する。対立の原因を日本がつくった形になる。国民もそれは望んでいない。参拝すべきではない」
安倍政権をがっちり支える側近グループ。彼らが激しく対立したのは、政権発足直後の昨年十二月二十六日のことだった。
 総理大臣補佐官に決まった衛藤晟一参院議員は、翌二十七日に安倍晋三首相に対して靖国神社を参拝するよう要請している。安倍が明確な態度を示さなかったため、衛藤は靖国神社に受け入れを準備するよう伝えた。
 これを耳にした菅義偉(すが・よしひで)官房長官はすかさず断念するよう安倍に迫った。安倍を挟んで菅と衛藤の綱引きが展開された。
さらに菅サイドに政務秘書官の今井尚哉(前資源エネルギー庁次長)、元外務事務次官の谷内(やち)正太郎内閣官房参与、衛藤サイドに飯島勲内閣官房参与が参戦し、首相官邸は靖国神社参拝をめぐり実務系とイデオロギー系が対立する事態に陥った。結局、安倍が菅の意見を受け入れ、事態は収束する。
 この経緯は箝口令が敷かれ、今に至るまで封印されているが、結果的に、菅の「景気・経済最優先、安倍カラー自重」路線が政権全体の方針として固まる転換点になったと関係者の間では受け止められている。
 外交・安全保障で独自色を強める安倍政権。その屋台骨を分析すると、大きく四つのグループに分けることができる。筆頭は、戦後レジームからの脱却 を旗印に掲げる安倍の思想に共鳴する「イデオロギー系」の面々である。衛藤のほか、自民党の高市早苗政調会長、古屋圭司国家公安委員長、下村博文文部科学 相、新藤義孝総務相、稲田朋美行政改革担当相らが該当する。
 イデオロギー系の中心人物は衛藤だ。安倍よりも七歳年長で、大分大生時代、宗教団体「生長の家」の学生組織「生学連」の運動家として名をはせた。 いわば衛藤は、安倍の「思想的な家庭教師」と位置付けられる。二人は一九九六年に『「保守革命」宣言』を共著で出版したこともある。
 生長の家の初代総裁、谷口雅春(一八九三~一九八五年)は現行憲法を連合国軍総司令部(GHQ)による押しつけだと批判する「明治憲法復元論」や 靖国神社の国家護持を提唱した。六四年には生長の家政治連合(生政連)を立ち上げ、政界に進出して、参院に玉置和郎、村上正邦らを送り込んだ。衛藤はその 流れを汲む「正統派」の保守派である。
 二つ目のグループが長引くデフレからの脱却を目指す、アベノミクスを支える「経済系」。麻生太郎副総理大臣兼財務相、茂木敏充経済産業相、林芳正農水相らがこれに当たる。
 三つ目が岸田文雄外相、小野寺五典防衛相ら「傀儡系」。外交と安全保障は首相官邸で主導する狙いから、無色透明な人材が充てられている。
 最後が、安倍に代わり日々の政策調整や危機管理を担う菅、加藤勝信、世耕弘成両官房副長官の「実務系」だ。

秋季例大祭で参拝か

今回の政権の特徴は、実務系の人材を首相官邸に集めたことにある。特に実務能力に長け政治力も強い菅は、政権の要と言っても過言ではない。塩崎恭久元官房長官ら「お友達」を首相官邸に集めて迷走した第一次政権の教訓を生かしている。
「来年夏の参院選までは景気回復、経済再生最優先でいきましょう。安倍カラーを出すのも自重してもらった方がいいと思います」
安倍が政権を奪還した昨年十二月の衆院選投開票日の数日前の夜、電話で安倍から組閣に関して相談を受けた菅は、こう進言している。この電話で、自ら が官房長官となることを予想した菅は、七月の参院選に勝利して、参院で過半数を失うねじれを解消することに力を傾注すべきだと主張した。そのためには国民 の要求が高い景気回復、経済再生を政権の至上命題として、衛藤らイデオロギー系の発信は慎むことも求めたのだ。案の定、菅の懸念は現実のものとなり、高市 が歴史認識をめぐる発言で物議を醸すなど、右派系の発言が問題視されるたびに菅は火消しに回っている。
「まさに気持ちが変わってはじめてデフレから脱却できるわけです。そう思わなければ、物の値段はまだまだ下がっていく。物は買わないし、物は作らな いし、設備投資はしない。それが十五年間続いてきたわけですが、何とかこれを脱却をすることが第一の私の使命です。同時に、子供たちが日本に生まれたこと に誇りを持てる国をつくっていく。これがそもそも私の大きな目標であります。このための教育の再生、さらには将来に向かって憲法改正に向けて頑張ってい く。これが私の歴史的な使命であると思っています」
 八月十二日、山口県長門市の後援会会合で安倍は、政権の主要政策の優先順位が参院選後も変わっていないことを表明した。その三日後の十五日、安倍 は靖国神社を参拝しなかった。尖閣諸島問題を抱える中国、竹島問題を抱える韓国に対するメッセージを発した格好だが、火種が消えたわけではない。

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