中国の「三戦」には「反三戦」戦略を



日本政策研究センター
中国の「三戦」には「反三戦」戦略を
投稿者:operatorT 投稿日時:2013/05/07(火) 00:00
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中国・対中外交
http://www.seisaku-center.net/node/554
 尖閣諸島を巡って中国との間で一触即発の危機が続いているが、そうしたなかで中国の対日戦略として「三戦」戦略が話題になっている。
 「三戦」とは世論戦、心理戦、法律戦の三つを言い、専門研究(『陸戦研究』掲載の斉藤良論文など)を参考にごく簡単に言えば、内外世論の中国共産 党と政府への支持を獲得し、一方で国際世論や相手の国内世論に工作して反中国政策を抑止するのが「世論戦」。「心理戦」は、恫喝や懐柔などによって相手の 意志に衝撃・抑止・士気低下をもたらす工作。国際法や敵の国内法を利用して中国に国際的な支持を集める一方、相手の違法性を主張して反中国政策を押さえ込 もうというが「法律戦」である。いわば「平時の戦争」の戦略要領とも言えるものである。
 
 確かに、連日のように中国が公船を尖閣諸島の領海に侵入させているのは日本側がひるむことを誘う心理戦だと見ることが出来る。また、中国人学者を して尖閣は共同管理すべきだなどと日本向けに語らせたりしているが、日本の世論を揺さぶる世論戦であり、さしずめ「尖閣棚上げ」を主張している元外務省の 孫崎某などはこの世論戦の先兵役と言える。
 法律戦はと言うと、昨年九月から中国首脳がカイロ宣言とポツダム宣言に言及し、敗戦国である日本が尖閣諸島の領有を主張するのは「国連憲章の趣旨 と原則に対する重大な挑戦」だなどと主張し始めたが、ポツダム宣言や国連憲章を利用して旧戦勝国の支持を獲得し、一方で日本の「違法」を主張して尖閣での 日本側の行動を押さえ込もうと狙う法律戦の典型だと言える。
 むろん、中国のこうした「三戦」工作は、力による恫喝であり、根拠のないプロパガンダだが、中国が「海洋強国の建設」という野望を遂げるために、軍事的圧力から恫喝、世論分断等々、あらゆる手段を使って「三戦」という「平時の戦争」を戦っているあり様が見えてくる。
 
 しかし、尖閣問題での最近の「三戦」はあまり効果をあげていないと言える。日本が安倍政権に代わって、まっとうな対応を始めたからである。安倍首 相は自ら「先頭に立って」領土・領海・領空を守ることを宣言し、民主党時代に後退した自衛隊による警戒監視態勢を強化し、防衛力の強化にも踏み出した。そ の一方、日米同盟の修復、首相や主要閣僚による東南アジア歴訪などによって「中国包囲網」とも言える外交戦を展開している。言論の自由などの価値観に基づ く外交、海洋は「力によってではなく」「(国際)法とルール」によって支配されるべきといった日本外交の原則も提起した。
 心理戦にはひるむことなく、毅然として主権を守る国家意志を明示し、世論戦では米国、東南アジア、インドといった国際世論をも喚起している。さら に、国際法による海洋支配という原則を打ち出して法律戦を展開している――こう見れば安倍政権はしたたかに「反三戦」を実行しているとさえ言える。
 
 この「三戦」は尖閣問題に限ったことではなく、むしろ歴史問題の方が深刻だと言える。最近も、麻生副総理など三閣僚の靖国神社参拝に対して、中国外交部は直ちに抗議の声をあげた。これは心理戦の一環だが、今回は安倍内閣の対応が冷静であるため効果はなかろう。
 しかし、世論戦となると、公明党の山口代表が「外交への影響は避けられない」などと反応し、新聞は「閣僚参拝は無神経だ」(毎日新聞)と安倍内閣 批判を始めるなど、中国が逐一工作するまでもないほど分断工作は進んでしまっている。しかも、今年一月にはニューヨーク・タイムズ紙が安倍首相を「右翼ナ ショナリスト」呼ばわりしたように、米国への世論工作も進んでいる。「村山談話」を国際約束として捉え、謝罪と反省を要求するのは、法律戦の意味も含んで いよう。その上、歴史問題では韓国という「反日同盟国」も利用できる。
 今求められているのは、安倍政権の尖閣対応にならい、歴史問題についても中国の挑発に乗らず、国内世論の分断を警戒・批判し、国際世論の支持を獲得するという歴史問題における「反三戦」をしたたかに展開する覚悟だと言えよう。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)
 
〈『明日への選択』平成25年5月号〉
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