多くの隣国にケンカ売る中国の稚拙さ 「国際法を守れ」外交戦で応じた安倍首相

多くの隣国にケンカ売る中国の稚拙さ 「国際法を守れ」外交戦で応じた安倍首相
2014.5.21 14:51
【湯浅博の世界読解】
http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/140521/wor14052114510020-n1.html
 インド総選挙の行方を息を殺してみていたのは中国であろう。民族色の強い人民党の圧勝で、中国外務省はただちに「中印両国は競争相手ではなく、協力パートナーである」と秋波を送った。穏健な国民会議派のシン首相が強調してきた決めぜりふをなぞったのだ。

 習近平政権はインドの中国離れへの警戒感が強い。自らの高圧的な外交姿勢から、尖閣諸島をめぐる日本との対立のほかに、ベトナム、フィリピンなどの近隣諸国とも反目している。米戦略国際問題研究所の上級研究員、エド・ルトワック氏によれば「多くの隣国にケンカを売る悪い戦略を追求するばかり」である。

 インドで反中気分を代表する人民党のモディ政権ができると、東シナ海や南シナ海での係争がシーレーンに沿ってインド洋にまで広がる可能性が大きい。中国の「悪い戦略」をめぐる周辺諸国との同時多発型対立の表面化である。

 振り返れば、中国は日本の尖閣国有化を奇貨として強硬になり、「侵略国日本が盗んだ」として包囲網の構築をもくろんだ。2012年の国連演説に始まり、ASEAN(東南アジア諸国連合)会議でも欧州歴訪でも、中国要人いくところ「日本の軍国主義復活」の大宣伝である。
 非力な他の周辺国に対しては、力任せに自国のルールを押し付けた。南シナ海のスカボロー礁からフィリピン漁民を追い出し、ベトナム船の探査ケーブルを切断した。南シナ海に「九段線」という領海版図を引いて島嶼(とうしょ)を分捕る手法は、「19世紀の帝国主義と同じ」と批判を浴びた。

 歴史上、オスマン帝国、フランス帝国、ドイツ帝国など大陸国家が海に向かうときは、力を振りかざし、周辺国の反発を招いたものだ。だが、中国はその結末として、あまたの帝国が崩壊していった歴史を鑑(かがみ)とすべきであろう。小国といえども、常に力に屈しているわけではない。

 安倍首相は「国際法を守れ」との外交戦で応じた。先に訪問したNATO(北大西洋条約機構)本部でも、中国を「国際社会の懸念」と述べ、尖閣周辺の領海侵犯を「力による現状変更の試み」と批判した。中国は「悪意を持って中国脅威論を言いふらした」と反論したが、直後に南シナ海で見せた強行策が安倍発言の正しさを裏付けた。

 中国がベトナムと争うパラセル諸島で、石油掘削装置(リグ)の設置を強行した一件だ。リグの支援に80隻という異常な数の艦船を動員した。中国の行動は紛争当事国の「合意の成立を危うくし、阻害すべきではない」とする国連海洋法条約に反し、紛争地の掘削自粛を求めるASEANとの行動宣言にも反する。
それ以前にも、フィリピン海兵隊が拠点とするセカンド・トーマス礁への補給船が中国船に阻止された。中国はこの補給活動が2002年の行動宣言に違反していると非難したが、フィリピンが同礁を領有したのは宣言の3年前である。これらの動きを見てインドネシアは、ナトゥナ諸島周辺の軍備を増強することを表明している。

 元来、争いごとを嫌うASEANも、ついに「深刻な懸念」を表す異例の外相声明を出した。当のベトナムは困惑のふりをしながら中国を侵略者とする外交キャンペーンを始めた。中国の「力による現状変更」は、アジア各国を対中国包囲の結束に駆り立て米国を引き込んで対中バランスを図ろうとする。(東京特派員)
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