【正論】 男系を堅持し皇統の危機克服を 国学院大学名誉教授・大原康男





【正論】
男系を堅持し皇統の危機克服を 国学院大学名誉教授・大原康男

2014.6.13 03:09 [正論]
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140613/imp14061303090003-n1.htm

 5月27日、宮内庁は高円宮家の次女、典子女王のご婚約が内定したと発表した。典子女王は大正天皇(第123代)の曽孫(ひまご)にあたられ、女性皇族が結婚で皇籍を離れられるのは、平成17年に結婚された天皇、皇后両陛下の長女、紀宮清子内親王(現、黒田清子さん)以来のことであり、また、天皇の曾孫以遠の女性皇族である女王のご結婚は戦後初めてという。

 お相手は出雲大社禰宜(ねぎ)の千家国麿(せんげくにまろ)さんである。千家家は代々出雲大社の宮司を務める名家で、今の宮司の長男である国麿さんも、いずれ宮司を継ぐべき責務を負っている。これまでも公家から千家家に嫁がれたことはあったが、皇室からの初めてのお輿入(こしい)れに現地の喜びは一入(ひとしお)のものがあり、全国的にも9年ぶりの皇室の慶事に各地から祝福の声が沸き上がった。

 ≪惜しまれる桂宮さま薨去≫

 ところが、それから10日ちょっとたった今月8日、今度は皇室のご不幸が出来(しゅったい)した。典子女王の伯父にあたる桂宮宜仁(よしひと)親王が薨去(こうきょ)されたのである。宜仁親王は三笠宮崇仁(たかひと)親王の次男で、昭和23年2月11日、建国記念の日のお生まれ-いや、建国記念の日の前身である「紀元節」がGHQ(連合国軍総司令部)の圧力で廃止されたのはこの年の7月だから、最後の「紀元節」の日のお生まれということになる。享年六十六というまだまだ惜しまれる急逝だった。

 生前は日・豪・ニュージーランド協会、大日本農会、大日本山林会など多くの公益団体の総裁ないし名誉総裁に就任され、昭和末年に罹(かか)られた難病を4年以上に及ぶリハビリによって克服、後遺症をものともせず、車いすに依りながらご公務をこなされた姿をテレビや雑誌のグラビアで記憶している人もいるだろう。

 さて、宜仁親王の薨去によって皇位継承権を有する男子皇族は5方となってしまった。そのうち崇仁親王は98歳というご高齢だ。小泉純一郎首相の下で拙速に進められようとしたものの、悠仁親王のご誕生によって沈静化した感のある皇位継承に関わる論議が再び活発化することは十分予想される。さらに、典子女王の皇籍離脱によって両陛下のご公務をお助けする皇族方のご負担が増すことについても言及されよう。

 ≪悠久の歴史をふまえて≫

 そこで、何よりもまず、議論の前提として確認しておかねばならないのは男系主義の原則である。周知のように小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」の報告書(平成17年)の眼目は、(1)皇位継承の資格を女子や女系天皇に拡大すること(「女系導入」)(2)皇位継承の順位を男女問わず年齢順にすること(「長子優先」)であった。

 たしかに、歴史上、女性天皇(女帝)は10代8方おられるが、いずれも男系(父方を通して皇統につながる)に属され、その大半は年少の男性皇族が即位されるまでの「中継ぎ」としての性格が強く、かつ、ご在位中は独身であられて天皇の配偶者(欧州の王室に見られる「王配(コンソート)」)など一度も存在したことはない(もっとも、男系であっても、女性天皇には生理上の理由から天皇の最も重要な本務である祭祀(さいし)面に支障がでることはあるが)。

 このような男系主義による皇位継承があってこそ、天皇による国民統合の精神的権威が担保されてきたのである。したがって、前記「有識者会議」の提言はわが国悠久の歴史を根底から覆す革命的な発想といわねばなるまい。

 ≪旧皇族復帰で宮家を拡充≫

 もちろん、対案はある。何度も繰り返し述べてきたことなので気がひけるが、昭和22年10月14日、連合国軍の軍事占領という異常事態の下で、GHQの経済的圧力によってやむなく皇籍離脱をされた元皇族ないし、そのご子孫の中から適切な方に皇籍を取得していただくという方策である。

 まさしく傍系から皇位継承を支えてきた宮家を拡充することによって男系主義に則(のっと)った皇位継承の安定性を確保しようとするものであり、限られてはいるが過去に前例がある。そのうち皇位に即(つ)かれたのは宇多天皇(第59代)と醍醐天皇(第60代)のお二方である。

 このようにして宮家の拡充が実現できれば、もう一つの課題である両陛下のご公務に対する皇族方のご分担の問題も同時に解消されよう。平成24年に野田佳彦首相のときに提唱され、有識者ヒアリングまで実施された「女性宮家」構想など無用の議論であったことをふと想起する。

 かつて本欄でも指摘したことだが、「皇室の活動を安定的に維持し、天皇皇后両陛下のご公務の負担を軽減していく」ために、「皇位継承とは切り離し」て「女性宮家」を創設しようとするのは矛盾も甚だしい。皇位継承と無関係な「宮家」など端(はな)から議論に上りようがないではないか。

 小泉首相の後継者となるや、直ちに「有識者会議」の提言を事実上白紙に戻した安倍晋三首相に切に望む。今日の皇統の危機を克服するための新立法をできるだけ速やかに講ぜられんことを…。(おおはら やすお)
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